K

美味しいもの、美容、ファッションときどき古典。

学参探訪1 栗原隆『栗原の古文単語教室』(東進ブックス、2019年12月)

良心的な書だが、いわゆる単語「帳」ではない

 『栗原の古文単語教室』は、非常に優れた内容です。語彙意味論をしっかりと踏まえた学参で、ゴロ合わせや無理なこじつけで単語を丸暗記しようと考える要素は一切ありません。はしがきや所々に少しばかり専門用語や、学術的な内容を散りばめすぎてしまったような印象もありますが、これを好む層は確実にいるでしょう。もしかすると、指導者の方に受けが良いかもしれません。

 ただ、いわゆる「単語帳」のように思うと、期待とは違うものだと感じる可能性があります。これは単語を「覚える」ための本というよりは、単語を「学ぶ」ための本だと私は思います。第1章「言葉が大きく変化してしまった言葉たち(形容詞・形容動詞)」、第3章「形態が大きく変わってしまった言葉たち」…のような章分けを目次でみるだけでも、古語をどのように理解し学べばよいのかの指南書であるという印象を受けます。実際各章各講では、頻出かつ意味を理解しにくい単語について非常にわかりやすい説明がなされています。ただ無味乾燥に覚えるだけがいいという人には、回り道に見えるかもしれないその説明こそが、この本の最大の価値と言えるでしょう。

 

別冊の単語帳

 この本では、いわゆる単語帳としての役割を持つ別冊がついています。見出し語、ワンポイント解説、例文などで構成されています。本冊で理解したことを基に、この別冊で暗記をしていくという作りです。しかし、この別冊については、他の単語帳の方が優れていると思います。というのも、コンパクトにまとまっているが故に、例文は一語につき一文です。多義の語については、複数の例文を用意してほしかったというのが本音です。

 とはいえ、本書の説明は優れたものであることは確かですから、本書を手に取ってみて惹かれるものがあれば、信じて読み込み使い込んでよいでしょう。一冊で完璧な古文単語帳などこの世に存在しないわけですから、時には辞書の助けを借りて、実際の原文と向き合っていきつつ触れる例文を増やして、自分の中のストックを増やしていけばよいのです。

 

ここに注目!「敬語」の説明

 栗原先生は元駿台講師ですから、「敬語」の説明には駿台らしさが表れています。と言っても、駿台らしいというより、いわゆる学校向け古典文法書の敬語の説明が未だに古いままだと言った方がよいのかもしれませんが。

 素材敬語、対者敬語という用語をしっかりと説明し、一般的な学参での敬語の把握よりも、はるかにわかりやすい説明をしてくれています。たまに「謙譲語Ⅱ」は入試では出てこない用語なのだから教えるべきではないと言われますが、「謙譲語Ⅱ」という用語を使うかどうかは別として、謙譲語という一つの語ですべてを説明してしまうのは、実際に読むうえでも難しいのではないかと思います。本書のような敬語の把握は、敬語について今まで曖昧であったり、もやもやしたものがあった方にとってその霧が晴れるようなもになる可能性があります。

 

 

栗原の古文単語教室 (東進ブックス 大学受験 実力講師シリーズ)

栗原の古文単語教室 (東進ブックス 大学受験 実力講師シリーズ)

  • 作者:栗原 隆
  • 出版社/メーカー: ナガセ
  • 発売日: 2019/12/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)