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古典文法における助動詞接続の学習について

はじめに

 その助動詞が、活用語の何形に接続するかを助動詞接続と呼ぶことが多いようです。この助動詞接続を暗記しておくことは、古文を読む上で非常に重要なことです。たとえば、紛らわしい語の識別であったり、また品詞分解を行って逐語訳を行う際にも、助動詞接続が分かっていなければ、太刀打ちできない場面は実に多いのです。今回は、この助動詞接続をどのように教えるか学ぶかについて、考えていることを思い付きのレベルではありますが述べたいと思います。

 

大まかに三種類のアプローチがありそう

①ゴロ合わせによる暗記

②替え歌による暗記

③意味によるアプローチ

学習参考書などを眺めてみますと、以上の三つのアプローチがあるようです。

まずは、①の例から見てみましょう。

 

①ゴロ合わせの例

未然形接続の助動詞

し、ほし、る、す、む、

「マンマ(を)じらす(と)サル(が)しずむ」

連用形接続の助動詞

り(完了)、り、し、

「竹切った、抜け」

終止形接続(ラ変型のときは連体形接続)の助動詞

じ、り、り(伝聞・推定)、む、し、

「豆、並べ」

変の然形・段の然形(命令形)に接続する助動詞「り」

「さみしい」

その他 ※ゴロ合わせ無し

なり(断定)=連体形・体言などに接続

たり(断定)=体言に接続

ごとし=連体形、体言、助詞「の・が」に接続

 

望月光『古典文法講義の実況中継①』(語学春秋社)より

  この他にも様々なゴロ合わせが世間には出回っているようです。どれが覚えやすいか覚えにくいかという議論はここではしません。共通して問題となるのは、いちいち古文を読みながらゴロ合わせを思い出すわけにはいかないということでしょうか。そこで、結局は丸暗記をすることになります。また、頭文字が重なる助動詞があるため、どれがどれだか混乱をしてしまう可能性があります。それでも、強い苦手意識を持っている学習者に対して、取っ掛かりとしては一定の効果はあるように思えます。

 

②替え歌の例

 こちらは、いくつかの動画を見つけましたが、そのうち「もしもしかめよ」の例を、参考資料として貼っておきます。こちらを選んだのに理由は特になく、たまたま最初に目についたからです。


歌で覚える古文文法1 助動詞の接続〜もしもし亀よ〜

 歌そのものが覚えやすいのか覚えにくいのかは、人それぞれの感覚によって違いがあるように思います。これが覚えやすい、楽しいと感じる学習は必ずいるとは思います。しかし、こちらもやはり、古文を読みながら歌をいちいち歌うわけにはいかないため、最終的には歌わなくても分かるような状態にしなければなりません。そのため、こちらも取っ掛かりとしては悪くはないと思いますが、効果という点については疑問が残ります。このようなアプローチをきっかけに興味を持ったり、楽しさを感じ、学習が捗るのであれば、それは喜ばしいことではありますが。

 

③意味によるアプローチの例

  たとえば、次のような説明を試みる場合があるようです。

未然形接続の助動詞

A「る」「らる」=受身・尊敬・自発・可能

B「す」「さす」「しむ」=使役・尊敬

C「ず」「じ」=打消

D「む(むず)」=推量

E「まし」=反実仮想

F「まほし」=希望

未然形接続の助動詞は

①自分の動作・意識から遠い意味のグループ=A、B

②まだ起きていないニュアンスの強い意味のグループ=C、D、E、F

 

連用形接続の助動詞

「き」「けり」=過去

「つ」「ぬ」「たり」=完了

「けむ」=過去

「たし」=希望

連用形接続の助動詞は過去・完了の意味を持つもの。「たし」のみ例外、「り」は完了・存続の意味を持つが、サ変未然形・四段の已然形(命令形)接続である点にも注意。また、「つ」「ぬ」は動詞由来であり、用言の上は連用形であることからも説明可能か。

 

終止形接続の助動詞

「べし」=推量、当然など

「まじ」=打消推量、打消当然など

「らむ」=現在推量

「なり」「めり」「らし」=推定

終止形接続の助動詞は、主に推量や推定の助動詞であるが、目の前性が強い。

 

連体形や体言に接続する助動詞

「なり」「たり」=断定

「ごとし」=比況

連体形・体言に接続する助動詞は主に断定の意味を持つもの。

 

※いくつかのテキストをもとに筆者が作成

  意味との対応によって整理してみると、うまくいく部分とうまくいかない部分、例外も出てきてしまいます。また、整理が妥当なものであるかは、検討が難しいのです。こじつけのようにも感じられてしまう場合もあります。何より、意味をすでに覚えており、ある程度理解している学習者にとっては理解を深めるために有効でしょうが、接続が覚えられないと悩む学習者にとっては、かえって難しく感じさせてしまう可能性さえあります。

 

いずれのアプローチもメリット・デメリットがある

 ここまで見てきたように①~③のどのアプローチもメリットとデメリットがあり、この教え方であれば、誰も助動詞接続が簡単に覚えられるとか、簡単にマスターできると言ったものではなさそうです。また、たとえば、「未然形接続の助動詞を列挙せよ」というような設問は入試問題ではありません。仮に何かでそのような設問があったとしても、古文を読む力を測るという観点からは無駄な問いに思われます。そのような問いに答えるために、ただ覚えるだけならば、上記①・②のようなアプローチは非常に効果が高いとは言えるかもしれません。目の前の学習者の状況や、興味関心、また学習の時期(学年や大学受験までの日程)に合わせて、上手く組み合わせたり、使い分けていくのがよいのかもしれません。

 

原文の中で仕組みを確認していく、活用表を活用する

 結局は、接続という知識だけを切り出してきて、覚えようとすることにはあまり意味がないように私には思えます。まず、接続と活用の仕組みをしっかりと理解させた上で、無理に覚えようとさせるのではなく、実際の文で助動詞が出てくるたびに、「活用表」を調べてもらう。そのようにして、何度も何度も「活用表」を「活用」しながら、本文を読みながら、仕組みを実感してもらうしかないのではないでしょうか。よく接続の重要性を説明するのに引かれる歌に次の歌があります。

夕月夜 小倉の山に鳴く鹿の 声のうちにや 秋はくるらむ

紀貫之古今和歌集』312

 

夕月夜を思わせるなんとなく暗い小倉山で鹿が寂しそうに鳴いている声とともに、秋は今頃暮れているのだろうか。

  これを、「らむ」や接続を理解しているかどうかを問う例として引くにも有効でしょうが、活用表から「らむ」を探してもらう、そして接続を確認してもらう。そこから「くる」が終止形であることに自分で気づいてもらう。そのことを通して、この歌の意味がつかめてくる。助動詞の接続が分かったことで、解釈に繋がったという経験をしてもらう。そういう調べて気づく経験を積ませてあげることが大切なように思います。その積み重ねの先にしか、助動詞接続が忘れにくく頭に残るという状態はないように思っています。

 

 

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