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伊田 裕 『入試によく出る 古文の徹底演習』(河合出版)

 入試によく出るから、頻出だから、重要なのではなく、重要だから、重要な何かを含むから入試でもよく出るし、頻出になるのだ。だからこそ、頻出出典、頻出の文章というのは何度も何度も味わって、咀嚼し、自分の血肉とすることが効果の高い学習となり得るのだ。

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 伊田 裕 『入試によく出る 古文の徹底演習』(河合出版)は、そのような頻出文章から学びつくす古文の学習を可能にする良書だ。本書の序文から、本問題集の特徴をそのまま抜き出す。

・頻出出典・頻出箇所の文章をジャンル別に源泉

・演習問題として一つの入試問題を選び、開設の中で、その設問に関する他の出題歴のある設問も紹介

・実力アップ問題として他大学の問題を掲載

  というように、一つの文章で、二度も三度も美味しい作りになっている。古文は他の長文が出題される科目に比べて、同じ文章に出会う可能性が格段に高い。まったく同じではないにしても、物語の全体を知っていることが有利に働いたり、違う作品であっても似たような展開になるために話を予測しやすかったりと、取り組んだすべての文章が、次の読解にわかりやすく役立ってくれるのである。それにも関わらず、一度読んだことがある文章なのに、設問にうまく答えられなかったり、間違ってしまうことがある。これは、その文章を自分のものにする学習ができていなかったからである。もしかすると、現代語訳を単に覚えているというだけで止まってしまっているのかもしれない。設問になっていない箇所も含めて、違う大学で同じ文章が出されたら、ここは設問になりそうだ……そんな視点を持てたなら、そんな視点ですべての文章にあたって学習を継続したならば、古文の実力は相当なものになるに違いないのだ。多くの文章に触れて、経験を蓄えるのはもちろん有益ではあるが、ひとつひとつの文章を味わい尽くす学習も効果があるし、そういう積み重ねがあればあるほど、古文の実力につながることは間違いないと私は思う。

 

 以上のような観点から、本書は非常に有益な問題集であるから、多くの人にお勧めしたい一冊である。ただし、解説はほどよく詳しいものの、ある程度古文ができる人向けに書かれている印象である。そのため、苦手な人が苦手を克服するために使うというよりは、より上を目指したいと思ったときに手に取りたい問題集だと言える。ひとつひとつの文章に真摯に向き合い、解説を隅々まで読み込んでほしい。それから、古文を教える機会のある人にとってもこの問題集の解説や、どんな文章を収録しているのかといった部分はかなり有益だと思う。ぜひ手に取ってみて欲しい。