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美味しいもの、美容、ファッションときどき古典。

笹森義通『古文の解き方が面白いほどわかる本』(KADOKAWA)

 古文を読み解くためには様々なコツがあります。しかし、どんなコツにも増して重要なのは、実は古文常識を含む背景知識なのではないかと私は思っています。この背景知識の中には、いわゆる文学史の知識も含まれます。文学史の知識というと、作者は誰かだとか、成立がいつかだとか、ジャンルは何だだとか、そんなことを思い浮かべる人が多いでしょう。

 しかし、それだけではありません。たとえば、『枕草子』であれば、どういった内容が語られているのか、その傾向であったり、主要な登場人物について知っていたり、そういう部分も含めて文学史の知識です。そして、この知識が読解に大いに役立つのです。英語や現代文に比べて、古文では同じ文章に出会う確率がとても高いのです。それは当然のことで、英語や現代文の入試に出題されるであろう文章は日々日々新たなものが書かれ続けていますし、”今”を反映した文章がセレクトされますが、古文は限りある古文の中からしか選ぶことができないからです。もちろん、世紀の大発見!新たな古文が発掘されることが無いとは言い切れませんが、そのようにして対象となる古文の数が増えることは稀でしょう。

 また、まったく同じ出典ではなくとも、「あれ、前に読んだ話に似ているぞ……」ということも古文ではよく起こります。多くの作品が『源氏物語』など中古の影響を受けて、中世以降に成立しています。それらの作品群は、それぞれ特色はあるものの、似たような展開を持っています。説話もいくつかパターンがあって、それを知っているだけで、だいたい話の方向性がつかめてしまうこともあります。もちろん、上記のパターンにあてはまらないお話だってあるにはあるのですが、パターンを知っている人と知らない人とでは古文の読め方に大きな差が出てしまうのです。このようなパターンを学ぶのに最適の読解問題集が笹森義通『古文の解き方が面白いほどわかる本』です。

 

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 タイトルは「古文の解き方」となっていますが、この本の最大にポイントは、ジャンルや作品ごとの読解ポイント・パターンが学べるという点です。先に述べた、古文を読むうえで必要な背景知識を身に着けることのできる一冊になっています。本文を視覚的にわかりやすく説明してくれている部分や、設問の解説も丁寧であり、必要十分なものになっています。ある程度の文法理解と単語学習が済んでいる人にとっては、良い練習の書となることでしょう。