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古文単語の覚え方に関するメモ

 この記事を読んだあなたは、古文単語を覚える方法やコツを期待したかもしれませんが、残念ながらその期待を裏切ってしまいます。ずばりこの覚え方がよいとか、こういうコツがあるんだとか、そういう話をすることは今回の目的ではありません。

 

 さて、古文単語の覚え方と言えば、「語呂合わせ」はダメだとか、逆に「語呂合わせ」最高!だとか、まったく両極端の意見を聞きます。私個人としては「語呂合わせ」には否定的なのですが、それが覚えやすいと言うなら、そうすればよいのではないかと思います。学習方法も相性ってあるんだと思いますし。ただし、すべての単語に「語呂合わせ」が有効か……という点についてはきちんと考えて欲しいなと思います。どうしても覚えられない、なかなか定着しない、そういう苦手とする単語に対して「語呂合わせ」をきっかけとして覚えることができるということは、まああり得るでしょう。しかし、数百の古文単語をすべて「語呂合わせ」で覚えることは、果たして効果的なのでしょうか。

 

 この話は「語呂合わせ」だけに限りません。たとえば、古文単語は漢字に変換せよということが言われます。確かに、仰る通りで、古文単語の多くは漢字で表記するとすればどうなるかという点を意識して学習することで、かなり捉えやすくなります。しかし、すべての単語がそうだと言えるでしょうか。あるいは、語源的なアプローチがよいということも言われますが、すべての単語について語源を知っておくことが大学受験における単語学習として正しいのでしょうか……。

 

 単語も様々です。人それぞれ違いがあるように、一つ一つの単語にも個性がありますし、物語があります。語源的なアプローチが有効なものもあれば、漢字表記を意識するのがよいものもありますし、いくつかの視点を組み合わせるべきものもあります。中には、全然手掛かりがなくて語呂合わせの助けを借りたら覚えることができた!ということもあるでしょう。唯一絶対の正しいやり方があって、そのやり方だけで、すべての単語を覚えて行こうとすること自体が、もしかすると間違いのはじまりなのかもしれません。

 

 とはいえ、やっぱり語源を意識したり、漢字を意識することは大切です。もちろんその語源そのものが、学問的には怪しい場合もあるのですが、語を理解したり覚える助けとしては有効であったりもするわけです。細かいことを気にしすぎると、本当に際限がないのが語彙の世界でもあります。そういうわけで、絶対的にこれが正しい古文単語の覚え方だ、これは間違った覚え方だと断じることは難しいことだと思います。けれども、そうなんだけれども、一つだけ、この記事を読んでくださったみなさんに意識して頂きたいことは、「例文」をきちんと読むということです。例文の中で、生きたものとして単語を扱ってあげてください。「あまた=たくさん」のような、一問一答の単語テストの世界に閉じないで欲しいと思います。一つだけと言いましたが、もう一つ。語のイメージを大切にしてください。『枕草子』の「春はあけぼもの」を読んで、「いとをかし」=「たいそう趣深い」、と機械的に一問一答の単語テスト的に覚えたって何も面白くないし、意味不明です。「趣深い」ってどういうことだろう、当時の人の美意識はどんなものだったんだろう、そしてどういう瞬間に「をかし」を使っているんだろうと、イメージをしてほしいと思います。

 

 語彙の学習は本当に大切です。大げさではなく、語彙を制するものは古文を制すると言っても過言ではありません。あなたの古文単語学習が、たのしく実りありますよう、お祈りしています!